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null「うれしいわ。何度か会社にお電話したんだけど、そのたびに外出中。癪《しやく》にさわってたところなのよ」 「それは、どうも。このところ営業での外出が増えてて……ところで、今夜あたり、いかがです。ぼくも奥さんに、大至急、会ってお話しておかなくっちゃならないことが起きてるんです」 「お話って……? 例のタウンハウスの件?」 「ええ、それもありますし、もうひとつ、お願いがあります」 (もうひとつの話というのは、もしかしたら、いつか訪れた刑事たちに関することだろうか?)  明日香はちらとそう思ったが、それだと難しい話になりそうだったので、電話では聞かないことにした。 「とにかく、お会いしましょうよ」 「ええ、何時頃?」 「私、いまから渋谷に買い物に出かけるところよ。夜とはいわずに、三時ごろいかが? 早いほうが私、助かるんですけど」 「結構です。ぼくも営業で外回りに出ますから、三時にいたしましょうか。とりあえずの落ち合い場所は、公園通りのカフェテラス〈スペイン坂〉あたり、いかがでしょう?」 「あ、いいわね。じゃ、スペイン坂で」  ——電話を置いた時、明日香の胸に、何とはなしに甘いときめきのまじったドラマへの予感と、それともうひとつ、不思議な不安と戦慄が、風のように掠《かす》めて流れた。  甘いときめきの気持ちは、いうまでもない。心待ちにしていた男から、やっと電話がかかってきたという歓びと、今夜、またあの晩のように稲垣とめくるめく時間をもつことができるかもしれない、という無意識下の期待であった。  しかし、それと背中あわせになっているのが、刑事たちから聞いた殺人事件の暗い影と戦慄であった。  腕時計をみると、正午をすぎたところだ。  明日香はやりかけの衣類の整理を大急ぎで片づけると、バスルームに入ってシャワーを浴び、念入りに化粧に取りかかりながら、稲垣に会ってまず、等々力で発生したという美人OL殺人事件のことを聞かなければならない、と思った。  明日香は、午後二時に家を出た。