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ルミノール マリーナ pam00299編集

 八百蔵はたけりくるって彼女をつかまえようと躍起になった。  おえんは、八百蔵のまわりをぐるぐるとまわった。一周りするたびに八百蔵の体に紐《ひも》がかかっていく。気がついたときは、八百蔵はぐるぐるにしばりあげられ、身うごきがとれなくなっていた。  おせいもびっくりしておきあがったが、彼女は肌襦袢一枚まとわぬ全裸であった。 「八百蔵っ、人ごろしの罪咎《つみとが》をうけるがいい」  おえんがそういいはなったとき、庭先を人影がいくつかかすめた。提灯のあかりがその人影をうかびあがらせた。 「なにを寝ぼけやがって、人ごろしをつかまえるのはおれの役目だ」 「おまえは山崎屋の一件で、お父っつぁんとあたしに恨みをもって、じっとつけねらっていたね」 「知るもんか」 「それで日本堤で手下の三人にあたしをおそわせ、不忍池の橋でお父っつぁんをおそってつきおとしたんだ」 「おまえ、わるい夢でもみたんじゃないか。どんな証拠があって、そんな世迷言《よまいごと》をいってるんだ」  八百蔵は自分にまきついた紐をときはなそうと懸命だが、紐はいっこうにゆるまなかった。 「いいのがれのきかない証人が今にやってくるから待っておいで」  おえんがそういったとき、廊下から新五郎、又之助、浜蔵の三人が姿をあらわした。  三人とも、一人ずつ荒縄でしばりあげた男をひいてきている。 「お嬢さん、三人とも一網打尽につかまえましたよ」  この三人は八百蔵の子分たちで、堀江町にある彼の貸し家に住んでいた。  おえんは新五郎、又之助、浜蔵に彼等の寝こみをおそわせたのだ。 「こいつらはおれの子分だが、おまえをおそったことも、仁兵衛をころしたこともねえはずだ」
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